「堂々と伝えること」の大切さを身をもって経験したことがあります。
私はゴールドマンサックス東京支店に新卒で入り、日本株トレーディング部でトレーダーとしてキャリアをスタートしました。毎日数多くの売買注文を執行。5年後にはロンドンに転勤となり、顧客や業者(日系及び外資系証券会社)との相対取引を毎日やりました。
アメリカ英語に慣れていた私にとって、歴史と伝統を感じさせるイギリスは、言葉だけでなく習慣も全く異なり、「本当に外国に来たんだ」と感じたものです。ロンドンオフィスでは、イギリス、アメリカ、フランス、ニュージーランド等、多国籍の社員と共に仕事をしました。そのお陰で、アメリカ英語以外のアクセントが強い英語にも慣れることができ、彼らと普通に仕事ができるようになりました。
ロンドンとニューヨークの時差は5時間です。ロンドンのお昼頃になると、朝を迎えたニューヨークからアジア株トレーダーから電話が来ます。その日も、いつものように日本株動向やドル円の話をした後、「ところで、もうすぐ産休を取るんだけど、誰か私のカバー(代役)に来てくれる人がいないかなあ。」と。
(私の心の声:ロンドンオフィスで日本株トレーディング経験者は自分しかいない。行くしかないか?でも、通用するかな?英語は速そうだし。でもニューヨークで働けるまたとないチャンスだな。)
「わかった。俺が行くよ!」と答えたのです。
と言うわけで、私はニューヨークに到着。2か月間のゴールドマン・サックス ニューヨーク本社での、日本株・アジア株トレーダーの仕事が始まったのです。
当時のニューヨークでの日本株は、NASDAQと呼ばれる店頭市場で取引される銘柄が多く、すべて電話による相対取引でした。マーケットメーカー(値付け業者)は、取引開始時間前に各銘柄の「売り気配値と買い気配値、そして最低取引株数」を業者間売買システムに入力しておきます。市場が始まると、ベストプライスを見せている業者に電話をして取引をするわけです。
取引開始時間が近づくと、周りが慌ただしくなります。同じフロアにあるアメリカ株トレーディングデスクではトレーダーの大きな声が飛び交います。「ファイザーに買い注文が集まっている」とか、「今日は相場が強含みで始まりそうだ」等。ヨーロッパ株トレーダーやイギリス株トレーダーに混じって自分も業務を開始。各トレーダーのデスクには、業者とつながる数多くのホットラインがありました。
市場開始直前に、国際株式のシニアトレーダーが私に言いました。
“Mikki(私のニックネーム)! You have never traded in New York so we will pick up the line and relay. OK? (ミッキィ! おまえはニューヨークでトレードしたことないから、俺たちが電話とって伝えるよ。良いかい?”
と言うわけで、自分は電話を取らなくて良いことになり、ホットしました。
だが、うかうかはしていられません。
すると、市場開始早々に同僚トレーダーのボブが私に向かって叫んだのです!
ボブ:“Mikki, TKIOY! Pay twenty-five and a half for 25, Salomon! (ミッキィ、東京海上! 25 1/2で2万5千株買いたし。ソロモン ! )”
私: “Sold to you! TKIOY, 25 at twenty-five and a half to Salomon! (売った!東京海上、2万5千株を25 1/2で,
ソロモン!)
取引したら直ぐに自分のTKIOYの売りと買いの気配値を変更し、トレード内容を社内システムに入力しなければなりません。
慌ただしく緊張の続くトレーディングデスクですが、昼時になると静かになります。そんな時間帯には支店からの問い合わせが来ます。デスクには各支店営業部とのホットラインがありました。シカゴならCH, サンフラン(サンフランシスコのこと)ならSFと、デスクの電話ボタンに書いてあり、チカチカ点滅したら電話を取るわけです。
SF: “Hi, who is this? (やあ、誰かな?”)
私: “It’s Mikki from the London Office. (ロンドンオフィスから来ているミッキィです。)”
SF: “Mikki, I understand that XYZ shares will be listed in Hong Kong. Do you know if US investors can purchase the shares? (XYZ株が香港に新規上場するらしいが、アメリカの投資家は買えるかどうか知ってるか?)
知っていることは的確に伝え、回答できない場合は「わからない」とハッキリ伝えるようにしました。ボソボソ言うのは絶対ダメ! 伝わりません。自信がなさそうに聞こえるため、こちらに対する信頼がなくなってしまいます。大きな声で「堂々と伝えること」。
さて、この後ある「事件」が起こります。それは、次回のお楽しみに!
ちなみに、以下の数字を英語でスラスラっと言えますか?
(数字を棒読みせずに)
250,000
1,000,000
¾
Veritas Coach
Mikiya Mori
Mikiya was born and raised in Gifu. He was fascinated to learn English when he was in junior high school. He practiced English words and sentences every day because he wanted to go to America. At college, he earned a study abroad opportunity in Seattle. His American experience really opened his eyes. As for career, he worked at Goldman Sachs and JP Morgan in the equities division for 18 years in Tokyo, London, and New York. In his 40s, he earned a Doctor of Education degree at University of Southern California to prepare himself for a career in education. Back in Tokyo, he managed an MBA program for mid-career managers as the program director for 12 years at Temple University Japan Campus. For many years, he wanted to help Japanese business professionals to be able to express themselves confidently in English and develop global mindset. Those qualities brought him many opportunities so now he wants to give back to society. Mikiya discovered Veritas whose mission matched with his passion. He believes in lifelong learning and hopes to contribute to students by sharing his experience. With the help of strong team, he is excited about the opportunity to inspire students to become global leaders of tomorrow.